-
見聞録
父と息子の物語『とんび』(原作:重松清)
瀬戸内海に面した吉備市。父ヤスは、運送業の仕事に携わる力はあるけれど不器用な男。 過ぎた女房と言われる優しい妻に男の子を授かり、可愛がります。 ある日、自分の仕事場を母子に見せようと、働く運送会社の倉庫に連れて行きます。そこで幼い息子が絡... -
読感
父の最後を看取りながら思うその人となり『無名』(沢木耕太郎)
この作者の『深夜特急』以来のファンです。 実の父の最後を、母・姉2人と交替で見守りながら、父の生涯と人となりを描き出した心に沁みるノン・フィクションです。 彼の父は築地で生まれ育ち、白金と麻布で暮らし、戦後は池上に住んでいました。そして亡... -
読感
童話のような怖い話『密やかな結晶』(小川洋子)
この島では、次々に物が消えていき、人々の記憶からも消えていきます。 主人公は小説を書いている若い女性。彼女の子どもの頃、地下室は母の彫刻の仕事部屋で、母が秘密の引き出しから、なくなった物を見せてくれました。 リボン、鈴、エメラルド、切手、... -
読感
スピーチライターとは?『本日は、お日柄もよく』(原田マハ)
また、マハさんの登場です。 スピーチライターという職業は、日本ではまだあまり知られていません。この小説では、企業の社長さんの挨拶や代議士の演説のスピーチを書く人のことです。 主人公の二宮こと葉は、製菓会社でOLをしています。幼馴染みで片思い... -
好日
城址公園の『カタクリ、桜、そして石垣』
晴天の月曜日、花好きの友人とお花見に出かけました。横浜線の片倉駅下車。10年ぶりです。素朴な駅の周辺には、駐車場が増えていました。 公園の入り口を入るとすぐ左側の池には、張り出した枝にカワセミが止まっていました。私の知っていたカワセミの子孫... -
読感
英訳で読む芭蕉の俳句の世界『松尾芭蕉を旅する』(ピーター・J・マクミラン)
この訳者マクミランさんは、朝日新聞に連載している「星の林に」で日本の詩歌を英訳しています。私はそれをずっと読んでいるファンなので、この本が出てすぐに買いました。 芭蕉の俳句も大好きで、このブログの最初にも書いたように、『奥の細道』への旅も... -
好日
2年ぶりの青山「ROSEBAY」
新型コロナの感染者が減ってきて、非常事態宣言が解除になりました。私もワクチンを3回接種してもらいましたし、2年ぶりに青山にあるお店へ行きました。 「ROSEBAY」はヒマラヤ岩塩を売っている小さなお店です。地下鉄「表参道」からA2の階段を上り、伊... -
読感
さりげなくて美味しそうな料理の『真夜中の栗』(小川糸)
ベルリンに滞在中の日記エッセイです。この作家の作品には度々美味しそうな料理が登場します。本人が料理好きな方だと分かりました。 まずパンケーキ。ささっと焼いて、バターとメープルシロップで。焼いた本人が、ホテルにいるみたいと、うっとりしていま... -
好日
温かさに誘われて咲き出した『シデコブシ』
昨日、今日の朝方雨、日中25℃という温かさに、ご近所にあるシデコブシが咲き出しました。 名前の由来は、花びらが8枚ほどに細くて、神社などのしめ縄につける四手という紙の飾りに似ているからだと言います。 先日まではヒヨドリが止まって、出始めた芽を... -
読感
愛にあふれた『愛なき世界』(三浦しをん)
T大としているけれど、これは本郷の東京大学・大学院理学系研究科生物科学専攻の面々に、作者が綿密に取材した結果の話でしょう。 登場するのはいつも黒い服を着た殺し屋のように見える松田教授(男)、助教の川井(男)、ポスドクの岩間(女)、院生の本村(女...