2022年– date –
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読感
15歳の少年の愛した女性は文盲の戦争犯罪人『朗読者』(ベルンハルト・シュリンク 松永美穂訳)
体調の悪かった15歳の僕は、バーンホフ通りで吐いてしまいました。その時にてきぱきと対処して家まで送ってくれた女性がいました。それがハンナ・シュミッツとの出会いです。 彼女はアパートの4階に住んでいて、市電の車掌をしている30代の女性でした。お... -
読感
人付き合いの大切さに気付かされる『傑作はまだ』(瀬尾まいこ)
加賀野正吉は大学4年の時に書いた小説で新人賞をもらい、それ以来作家として50歳まで暮らしています。 1人にしてはかなり広い家の一室にこもり、毎日パソコンに向かって文章を綴っています。人と接するのは編集者との打ち合わせのときのみで、近所付き合い... -
好日
雑草の中から生えてくる清楚な花『タイワンリリー』
梅雨が明ける頃から雑草や灌木の中から細い茎を伸ばして、夏になると真っ白い清楚な花を咲かせます。 台湾から来たという「タイワンリリー」または「タカサゴユリ」といいます。テッポウユリの一種です。 我が家も今年は5箇所に生えています。球根なの... -
読感
国立西洋美術館ができるまで『美しき愚かものたちのタブロー』(原田マハ)
東京・上野駅を出てすぐにある国立西洋美術館。横長長方形のすっきりした建物はル・コルビジュエの設計です。門を入ると前の庭で、ロダンの「地獄門」「カレーの市民」「考える人」が迎えてくれます。美術館に入れば、常設展では松方コレクションが展示さ... -
読感
呼んでいる声がきこえますか?『52ヘルツのクジラたち』(町田そのこ)
大分県の海に面する丘の上の一軒家に越してきた三島キナコ。その町で虐待されているらしい少年と出会います。 キナコ自身が母と義父から虐待され、子ども時代から辛い苦しい状態で過ごしました。高校時代からの仲良しの晴美とその職場の友人アンさんが支え... -
読感
仲間からのアドバイスが効く『大事なことほど小声でささやく』(森沢明夫)
6編の短編から成る物語です。すべてに関わるのは「ゴンママ」と呼ばれる優しくて愉快な大男・権田です。 1.本田宗一 45歳のサラリーマン。高校生になった一人娘のことで悩んでいます。シェフになりたくてフランスに留学を希望しています。しかし父親と... -
読感
ドリトル先生とスタビンズ君の冒険物語『ドリトル先生ガラパゴスを救う』(福岡伸一)
朝日新聞に連載している時から楽しみにして読んでいた物語です。そして、これが本になって出たら、小学4年生の孫にプレゼントしようと思っていました。成長していく男の子には、うってつけの物語です。 主人公は医師でありナチュラリストのドリトル先生と... -
読感
音楽教室にスパイとして潜入『ラブカは静かに弓を持つ』(安壇美緒)
全日本音楽著作権連盟に勤める25歳の橘樹は3歳から15歳までチェロを習ったことがあります。それが理由で、ミカサ音楽教室にスパイとしてレッスンに行かされます。 最大手のミカサ株式会社の音楽教室で使われる教材からも、著作料を取らねばならない、とい... -
好日
涼しい風の吹き抜ける『箱根・湿生花園』
気持ちよく晴れた日、植物好きの友人と箱根の湿生花園に行きました。 入ってすぐの池に青い珍しい花が咲いていました。ポンテチリアという初めて知る名前です。 緑の木立の中では、真っ白いササユリが迎えてくれました。私の携帯のアドレスにもしている好... -
読感
ザルツブルグでの日記エッセイ『オーストリア滞在記』(中谷美紀)
中谷美紀さんは女優です。6年前にドイツ人のヴィオラ奏者と結婚して、1年の半分をザルツブルグの標高600mの場所にある自宅で過ごしています。この本はコロナでロックダウンの始まった年の5月1日から7月24日までのエッセイ風日記です。 6月の末の猛暑に...