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読感
ストーリーテラーの傑作『田園発 港行き自転車』(宮本輝)
舞台は富山県。この作者は北日本新聞から連載小説を頼まれて、取材に富山に行った時のことを、エッセイに記しています。 立山連峰から流れ落ちる冷たい急流の黒部川の畔で入善町の稲穂が揺れる広大な畑を見た時、この小説の構想が湧いたそうです。 登場人... -
読感
サポーター達が眩しい『雪と珊瑚』(梨木香歩)
お正月にうっすらですが雪が降ったので、この本を思い出しました。でも降る雪とは関係なく、赤ちゃんの名前で、珊瑚がその母親の名前です。 21歳の珊瑚は育った家庭に恵まれず、高校を中退してパン屋でアルバイトをします。結婚した同い年の夫とは1年足ら... -
見聞録
絶筆の絵で涙『東山魁夷展』
今年、居間に貼ってあるカレンダーの絵は東山魁夷画伯の「新緑」です。手前に白樺の白い幹がくっきりと立ち、遠くの林が新緑の清々しい絵です。画伯の絵はけっこう見ているつもりでしたが、これは初めての絵で、新春の気分に浸っています。 2018年11月、国... -
好日
雪国を思い出す『首都圏に初雪』
快晴キラキラのお正月の後、1月6日は朝から震えがくるほど冷え込んで、ついに午後から雪が降り始めました。春の淡雪のように軽い雪でしたが、夜までに数センチ積もりました。 7日の朝、シャッターを開けると庭は静寂の雪景色。銀世界というほどではありま... -
読感
学ぶことたくさんの『すばらしい新世界』(池澤夏樹)
主人公の林太郎は電力会社で風車を設計・設置しているエンジニア。ヒマラヤ奧地の小さな村に乞われて風車を立てに行くことになります。 まずは下見に。カトマンズの空港に出迎えてくれたのは、現地での通訳・ラム君。日本語が巧みな好青年です。彼のお陰で... -
好日
お正月の楽しみ『箱根駅伝』
私は30年来の「箱根駅伝」のファンです。 1月2日は東京・大手町から大学20校と学連選抜の計21人の若者達が走り出します。ビル群を抜けて国道1号線を、鶴見・戸塚・平塚・小田原の中継所でバトンを引き継ぎながら、箱根の芦ノ湖を目指す約110㎞、6時間20分... -
好日
『新春』
2022年、明けましておめでとうございます。 今年はどんな年になるのでしょうか。嵐の吹きすさぶ日は、小さく丸まって暴風をやり過ごし、お日様きらきら快晴の日は、光を浴びて感謝しましょう。どんな日も小さな楽しみを見つけていきたいです。 -
読感
寂しい50代の清純な恋『モンローが死んだ日』(小池真理子)
軽井沢に1人で住む鏡子は、夫を亡くしてから精神状態がおかしくなり、精神科を受診します。そこで出会った同年代の医師の優しさのこもる受容に、次第に癒やされて行きます。 医師が、鏡子の勤める作家の記念館を訪ねて来た日以来2人は親しくなり、横浜か... -
好日
お目出度い『小鳥の落とし物』
この冬も我が家の庭には、マンリョウの若い木が何本もたくさんの赤い実を付けています。つやつやした目立つ実は、万両という名に相応しくお目出度い雰囲気です。 でも、これは私が植えたのではありません。いつの間にかあちこちの草むらから生え出てくるの... -
読感
デパ地下が楽しい『和菓子のアン』(坂木司)
主人公は、梅本杏子(通称アンちゃん)。高校を卒業したばかりの18歳。身長150cm、体重57kg。彼女の目線からの語りが軽妙で分かり易く、とても楽しく読んでいける小説です。 杏子は大学には行きたくないし、専門学校へ行くほど興味のあることもないため、...