読感– category –
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ドリトル先生とスタビンズ君の冒険物語『ドリトル先生ガラパゴスを救う』(福岡伸一)
朝日新聞に連載している時から楽しみにして読んでいた物語です。そして、これが本になって出たら、小学4年生の孫にプレゼントしようと思っていました。成長していく男の子には、うってつけの物語です。 主人公は医師でありナチュラリストのドリトル先生と... -
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音楽教室にスパイとして潜入『ラブカは静かに弓を持つ』(安壇美緒)
全日本音楽著作権連盟に勤める25歳の橘樹は3歳から15歳までチェロを習ったことがあります。それが理由で、ミカサ音楽教室にスパイとしてレッスンに行かされます。 最大手のミカサ株式会社の音楽教室で使われる教材からも、著作料を取らねばならない、とい... -
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ザルツブルグでの日記エッセイ『オーストリア滞在記』(中谷美紀)
中谷美紀さんは女優です。6年前にドイツ人のヴィオラ奏者と結婚して、1年の半分をザルツブルグの標高600mの場所にある自宅で過ごしています。この本はコロナでロックダウンの始まった年の5月1日から7月24日までのエッセイ風日記です。 6月の末の猛暑に... -
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お仕事小説の先駆『閉店時間』(有吉佐和子)
この作者は『複合汚染』でも『恍惚の人』でも数年先の人々の苦労を先取りするような小説を書かれていて感服していました。 これは同じ女子校を出た3人の女性が新宿の大手デパートに勤めた5年間の物語です。最近も人気のあるお仕事小説の先駆けともいえま... -
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浄瑠璃の世界を楽しく覗ける『仏果を得ず』(三浦しをん)
この作者のファンで、作品のほとんどを読んでいるのに、この作品は敬遠していました。今までに一度しか見たことのない伝統芸能なんて畏れ多い、と思っていましたが・・・。 読み出したら面白くて、いっき読みでした。 主人公の健は、高校の時に見た文楽で眠り... -
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さまざまな人の再出発を描く『海の見える理髪店』(荻原浩)
表題を含めて6編の短編集です。 「海の見える理髪店」 海辺の小さな町にある理髪店。年輩の店主が1人で切り盛りしている人気のお店です。予約を入れて行くと、シャンプーからマッサージまで付いた心地よい昔風の理髪店です。 特徴は、海を写す大きな鏡が... -
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帝国図書館の歴史と喜和子さんの生涯が絡む『夢見る帝国図書館』(中島京子)
この小説では、帝国図書館の歴史と喜和子さんという個人の生涯の物語が交互に語られます。実は私はこのタイプの進み方が苦手で、どうしても一つの話の方を続けて読みたくなってしまいます。 ここでは帝国図書館の歴史を先に、喜和子さんの生涯を後でまとめ... -
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連句と和菓子とポップ『言葉の園のお菓子番』(ほしおさなえ)
一葉は、大学を出て4年勤めた書店が閉店して、仕方なく、文京区根津にある実家に戻りました。亡くなった大好きな祖母の部屋には、本棚が1つ残っていました。 入院中にお見舞いに行った時に「私がここから戻れなかったら、本棚にあるノートを見てほしい」... -
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乱世の石垣造り職人たち『塞王の盾』(今村祥吾)
世は戦国時代。匡介は8歳の時に織田軍に攻められた一乗谷で、一家で逃げ惑ううちに父と妹とはぐれ、群衆で身動きできない母から「子どもなら足元を潜って抜けられる。早く行きなさい」と繋いだ手を放されて、山に逃げます。 そこで岩や石の声を聞きながら... -
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ストレス解消の上級者向き登山『八月の六日間』(北村薫)
題名になっている話は最終章で、全部で五つの山行話です。 「九月の五日間」 主人公はある雑誌社の副編集長、30代後半の女性です。山登りにハマったきっかけは、ストレスの溜まっているときに同僚の女性から山行に誘われます。 大菩薩峠傍の滝子山へ紅葉...