-
画学生たちの青春『ピカソになれない私たち』(一色さゆり)
東京・上野にある国立美術大学の森本ゼミ。4人の学生が「自画像」という課題の絵を描き、教授の評を受けています。森本教授は、ハラスメントで訴えられそうな、厳しく相手をやっつける言葉を投げます。 猪上詩乃:両親ともこの大学を出た画家です。彼女は... -
幸せにはさまざまなタイプがある『瞳のなかの幸福』(小手鞠るい)
妃斗美は35歳で独り者。小さな雑誌社の副編集長です。仕事は面白くてやりがいがあります。けれど…休暇で実家に帰ると、母は「貯金をしておきなさいよ。・・・いい人はいないの?」と言い、弟は「40、50になっても女が独身でいるなんて、化け物だ」と言いま... -
サスペンスタッチの凄まじい話『雪の鉄樹』(遠田潤子)
*私はサスペンス小説は、ほとんど読みません。怖い話が嫌いな臆病者ということもありますが、人が殺められるのが嫌なのです。この小説は、植木職人が主人公というところに引かれて読み始めましたら・・・まさにサスペンスです。どうしようと思う間もなく... -
黒沢明監督『生きる』のイギリス版『生きる Living』
*これは日系イギリス人の作家、カズオ・イシグロが熱意をもって脚本を書いた作品です。黒沢の映画で唯一印象に残っているシーンは主役の志村喬がブランコに揺られながら♪命短かし恋せよ乙女♪を歌うところです。それほど昔の映画を戦後のロンドンを舞台に... -
小学5年生の、出発点だった夏休み『しずかな日々』(椰月美智子)
枝田光輝は、働く母と2人暮らしの小学5年生です。家事はまあまあ手伝えますが、勉強はダメ、運動もダメで、友達もいません。ところが5年生になったクラスで押野に初めて声をかけられて、友達になりました。押野は明るくてお調子者の人気者で、光輝とは真... -
博士の人生と植物愛が判る『草木とともに 牧野富太郎自伝』(牧野富太郎)
*4月からNHKの朝のドラマで牧野富太郎博士の物語が始まります。主演を神木龍之介が演じるので、とても楽しみです。大袈裟に言うと、私は牧野先生の孫弟子ではないかと思います。50代の10年間、月一回の植物観察歩きで指導してくださった先生が、牧野博士... -
お花見もできた『お墓参り』
★すがも平和霊苑:4年前に逝った妹が眠っています。妹は独身の時期が長く、仕事をして好きなイタリア美術の研究にのめり込んで、成果を上げました。毎年、ごく親しかったお友達3人が一緒にお参りしてくれます。 桜は5分咲きで、古木の貫録を醸していました... -
風変わりな司書が選んでくれる本『お探し物は図書室まで』(青山美智子)
一章「朋香」:21歳の朋香の職場は、総合スーパーの中の婦人服売り場です。田舎を脱出したくて東京の短大に入り、就職の時に30社くらい落ちて、最後に決まったのがこの会社です。けれど、お客のクレームには上手に対応できず、なんとなく勤めているだけで... -
今の看護師が80年前の戦時下に行ったら・・・『晴れたらいいね』(藤岡陽子)
紗穂は24歳の看護師です。受け持ちである雪野サエの様子を診にきました。95歳、脳梗塞を起こしてもう3年も意識不明です。ところがその夜、サエの意識が戻り紗穂の腕を握ります。そのとたんに大地震が起こりました。病室が逆さになった気がして、強い吸引力... -
60歳後半から70代半ばになった著者からのメッセージ『質問 老いることはいやですか?』(落合恵子)
*お正月過ぎに、青山通りから入ったところにあった「クレヨンハウス」の前を通ったら、「吉祥寺に引っ越しました」という看板が掛かっていて、がっかりしました。以前は道路から下がったところにオーガニックレストラン、2階から上は絵本の専門店があり...