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サスペンスタッチの凄まじい話『雪の鉄樹』(遠田潤子)
*私はサスペンス小説は、ほとんど読みません。怖い話が嫌いな臆病者ということもありますが、人が殺められるのが嫌なのです。この小説は、植木職人が主人公というところに引かれて読み始めましたら・・・まさにサスペンスです。どうしようと思う間もなく... -
黒沢明監督『生きる』のイギリス版『生きる Living』
*これは日系イギリス人の作家、カズオ・イシグロが熱意をもって脚本を書いた作品です。黒沢の映画で唯一印象に残っているシーンは主役の志村喬がブランコに揺られながら♪命短かし恋せよ乙女♪を歌うところです。それほど昔の映画を戦後のロンドンを舞台に... -
小学5年生の、出発点だった夏休み『しずかな日々』(椰月美智子)
枝田光輝は、働く母と2人暮らしの小学5年生です。家事はまあまあ手伝えますが、勉強はダメ、運動もダメで、友達もいません。ところが5年生になったクラスで押野に初めて声をかけられて、友達になりました。押野は明るくてお調子者の人気者で、光輝とは真... -
博士の人生と植物愛が判る『草木とともに 牧野富太郎自伝』(牧野富太郎)
*4月からNHKの朝のドラマで牧野富太郎博士の物語が始まります。主演を神木龍之介が演じるので、とても楽しみです。大袈裟に言うと、私は牧野先生の孫弟子ではないかと思います。50代の10年間、月一回の植物観察歩きで指導してくださった先生が、牧野博士... -
お花見もできた『お墓参り』
★すがも平和霊苑:4年前に逝った妹が眠っています。妹は独身の時期が長く、仕事をして好きなイタリア美術の研究にのめり込んで、成果を上げました。毎年、ごく親しかったお友達3人が一緒にお参りしてくれます。 桜は5分咲きで、古木の貫録を醸していました... -
風変わりな司書が選んでくれる本『お探し物は図書室まで』(青山美智子)
一章「朋香」:21歳の朋香の職場は、総合スーパーの中の婦人服売り場です。田舎を脱出したくて東京の短大に入り、就職の時に30社くらい落ちて、最後に決まったのがこの会社です。けれど、お客のクレームには上手に対応できず、なんとなく勤めているだけで... -
今の看護師が80年前の戦時下に行ったら・・・『晴れたらいいね』(藤岡陽子)
紗穂は24歳の看護師です。受け持ちである雪野サエの様子を診にきました。95歳、脳梗塞を起こしてもう3年も意識不明です。ところがその夜、サエの意識が戻り紗穂の腕を握ります。そのとたんに大地震が起こりました。病室が逆さになった気がして、強い吸引力... -
60歳後半から70代半ばになった著者からのメッセージ『質問 老いることはいやですか?』(落合恵子)
*お正月過ぎに、青山通りから入ったところにあった「クレヨンハウス」の前を通ったら、「吉祥寺に引っ越しました」という看板が掛かっていて、がっかりしました。以前は道路から下がったところにオーガニックレストラン、2階から上は絵本の専門店があり... -
富士山と河津桜と菜の花と…『松田山にお花見』
磨いたような青空の日、花好きな友人と小田急線・新松田へやってきました。駅の陸橋からど~んと富士山が見えて、歓声を上げます。ところが駅前は人の行列。平日を狙ったのに、同じ考えの人々がこんなにたくさん!JR松田駅前からバスが出ているというのに... -
ヨーロッパに着いた少年たち『風神雷神~下』(原田マハ)
少年たちが涙を流す出来事が、ゴアで起こりました。日本を出る時から父のような存在だったバリアーノがインドの管区長になられて、ゴアに留まることになりました。一緒にローマに行けないことを、心から残念に思って泣きました。宗達には「そなたも使節の...