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クリスマスにまつわるお話『わが心のクリスマス』(パール・バック 磯村愛子訳)
*クリスマスにまつわる14編のエッセイから3編を選びます。 「遠い昔のクリスマス」:遠い昔、中国北部の古い町で初めて夫と二人だけのクリスマスを迎えようとしていました。夜中の12時ごろ玄関で小さなノックの音がしました。こんな時間にだれだろう、と... -
聖書の話から10の物語『ベツレヘムの星』(アガサ・クリスティー 中村能三訳)
*心の動きを描くのが上手なクリスティー女史の物語から、3編選びました。 「いたずらロバ」:いたずらするのが大好きな小さなロバがいました。背中に何かを乗せられると振り落としたり、人を追いかけて噛みついたりします。飼い主は始末に困って売り、次... -
仲良しの従姉との温かな日々『クリスマスの思い出』(トルーマン・カポーティ 村上春樹訳)
広々とした田舎家に親戚と住む僕と従姉は、7歳と60歳過ぎだけれど仲良しです。11月の終わりに近い日の朝、彼女は「フルーツケーキの季節が来たよ!」と叫びます。二人は僕の赤ん坊の時のうばぐるまを引いて、果樹園へ行きます。風で落とされたピーカンをた... -
江戸時代の日本からローマへ行って帰って殉教した男『殉教者』(加賀乙彦)
*今はアドベント(待降節)です。クリスマスを祝う日曜日から4週間前の日曜日より、クランツの4本のローソクに1本ずつ火が灯ります。11日には2本、18日には3本、25日の当日には4本のローソクが輝きます。その季節にふさわしいイエス・キリストに関わる... -
14編の短編集『杜子春』(芥川龍之介)
*それぞれ印象深い短編ですが、長くなるので特に私の心に留まった話を記します。 「秋」:信子は女子大生の時から才媛でした。大学生の従兄の俊吉とは仲が良くて、文学の話をしたり妹も一緒に音楽会や展覧会に出かけました。周りがこの2人は結婚するもの... -
漂泊の歌詠み『西行』特別展(五島美術館)
紅葉が始まった11月の下旬に、上野毛の五島美術館へ出かけました。駅から7分ほど、由緒正しい雰囲気でした。 私が西行に引き付けられたのは、学生時代に習った和歌です。「願わくは花のしたにて春しなむ その如月の望月のころ」。桜の花が大好きだった私... -
映画はさらに素晴らしかった『日の名残り』(カズオ・イシグロ/土屋政雄訳)
この映画を見た時、執事を演じたアンソニー・ホプキンスにすっかり参りました。まさにイギリスの執事のイメージにぴったりでした。その印象のみ残っていたので、原作を読んだときに改めてイギリス上流階級の執事という役割に感じ入りました。 ダーリントン... -
温かくて清々しい『夏美のホタル』(森沢明夫)
プロのカメラマンを目指す22歳の慎吾と幼稚園教諭の23歳の夏美は仲良く付き合っています。ある休日、夏美のホンダのバイクの後ろに乗って、房総半島の森の奥へ走っています。突き当りに木造の雑貨屋がありました。二人はトイレを借ります。そこには84歳の... -
高校生コンビが格好よい『本と鍵の季節』(米澤穂信)
図書委員になってから親しくなった2人の高校二年生の男子が格好いいです。松倉詩門は勉強もスポーツも出来、スタイルも顔も良く、物事を斜めに見るタイプ。堀川次郎はまじめで優しいです。この2人が謎解きに関わっていく六つの物語です。 1、一年先輩の... -
母の愛の力はすごい『タカラモノ』(和田裕美)
ほのみが小学校2年生の秋、家族は池を埋め立てた新興住宅地に引っ越してきました。その一か月後、小学校の運動会があり、6年生の姉はリレーで一番に、ほのみは周回遅れでビリでした。でもママは「あそこであきらめないで最後まで走って偉かった」とほめて...