大ヒットしていた『蜜蜂と遠雷』を読んだのは、5年前(2016年)のお正月明けでした。突発性難聴で受診した1月4日の夕方から入院した病室で、です。
9時から12時半まで左腕に点滴の針を刺されてベッドの上に寝たまま、お腹の上に幅4センチもあるずっしりと重い本を乗せ、右手で支えて読みました。
面白かったこと!!主治医に「根を詰めないように」と注意されて、5日間かけて読みました。
登場人物たちの魅力、彼らが奏でるピアノの曲の内容を言葉で丁寧に表現している凄さ。読み終えてもすぐには他の本に移れませんでした。
そのスピンオフの短編集が出たので、本屋で求めました。
ところが、登場人物たちのコンクール後の行動や、それ以前の馴れ初めなどが書かれた6編の短編集よりも、後ろのページから載せられていた横書きの、音楽誌やオール読物への掲載文、第10回浜松国際ピアノコンクールに寄せて書かれた文章の方に感銘を受けました。
それによると、著者は4歳からピアノを習い、CDをよく聴いた方と言うことが分かりました。大学時代はビッグ・バンド・ジャズサークルに入って、アルト・サックスを吹いていたそうです。
その上あの小説を書くために、各曲のCDを繰上り返し聴いたそうです。それですっかり納得しました。あの素晴らしい小説はそのような人にそのようにして書かれたのだ、と言うことが。
3年に1度開かれる若い才能たちの集う所、浜松国際ピアノコンクールも膨大な労力と時間の集大成です。『蜂蜜と遠雷』もそのような労力と時間の結集で、書き上がったのですね。深く納得しました。
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