30代のホテルマンと書家との友情物語「墨のゆらめき」(三浦しをん)

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墨のゆらめき

真面目なホテルマンの続力は、お得意様が亡くなったお別れの会をするために、招待状を送ることになります。登録してある書家の中から送り主は、遠田書道教室の「字」を選びました。京王線下高井戸駅にある遠田書道教室という看板のある古い日本家屋を訪ねます。

2代目なのか、紺色の作務衣を着た力と同年配の青年が、和室に長い机を並べて小学生に習字を教えていました。なかなかの男前ですし、子どもたちからも慕われているようです。教え方もお手本通りというより、感じたままを書かせているようです。その人の「風」という字は風が吹いているように見えます。

教室が終わった後、小学上級生の三木遥人君が「相談があります」と言って残りました。力の持参したお土産のフイナンシェを食べながら聞きます。仲の良い友達が岩手県へ引っ越してしまうので、その前に手紙を渡したいそうです。若先生に代筆をお願いしたいということなのです。ところが内容は力が考え、字は遠田が小学生っぽく書くことになりました。三木くんはお礼にうまい棒を一本ずつくれました。

ある日「美味しい肉が入ったから、すき焼きをご馳走する」という連絡が入り、朝食も採らずに直行します。すっかりくつろいで、美味しい味付けのすき焼きと、ナメロウまでご馳走になります。お酒をビールに変え、膝に乗ってくる黒猫のカネコに餌を食べさせます。そんなこんなで遠田のところで、代筆の手伝いをするようになります。

年末年始は、ホテルで過ごす家族も多く、大忙しです。ホテルからお客に送る年賀状は、遠田に書いてもらいました。忘年会に呼ばれて行くと、小中学生のお八つ大会でした。ジュースを飲んだりお八つを食べたり、賑やかです。三木君に、先日の手紙代筆のお礼を言われます。

正月は実家の釧路に帰省して、遠田にも「まりも羊羹を」をお土産にしました。何だかんだで、2人は友達のような関係になります。大らかな書家と実直なホテルマンとのコンビが、楽しいです。

著:三浦しをん
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