悲劇的状況を喜劇的に表わした「川っペり ムコリッタ」(萩上直子監督)

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ムコリッタ

富山県の日本海に面した漁港。イカがたくさん獲れます。山田(松山ケンイチ)はそこの塩辛工場で働き始めます。

工場長(緒方直人)の口利きで、川べりの古い木造長屋を紹介されます。

ある日、隣の住人・島田(ムロツヨシ)が風呂を貸してほしいと、無理やり押しかけてきます。それ以来、夕食の時間に勝手に上がりこんで、炊飯器からご飯をよそい、塩辛をおかずに食べていきます。迷惑がる山田に、庭で栽培しているキュウリやナスの漬物を持参して「一緒にメシを食うのはうまいだろう?」と言います。

夫を亡くして娘を育てながら大家をしている南(満島ひかり)。息子と二人で墓石を販売する溝口(吉岡秀隆)はどこでも玄関払いにあいます。

ある日、お金持ちのお宅で墓石が売れました!溝口の家からすき焼きの美味しそうな匂いがしてきます。島田は山田を誘って部屋に飛び込み、牛肉をむさぼります。大家母娘もとんできます。皆の美味しそうな嬉しそうな楽しそうな姿・・・♪

鉄橋の下、粗大ごみが積み上げられた場所で、溝口の息子はピアニカを吹いています。そのメロディーがとてもいいです。それは最後の散骨シーンでもずっと奏でられています。

山田の元へ父の死の知らせが届きます。子供のころにいなくなった父のことは何も知りません。しかしお骨を引き取りに行きます。父の最後の処理をした役所の男(柄本佑)に住んでいたマンションを教えられ、自然死だったことを知ります。そしてお風呂上りに牛乳を飲む習慣があったことを知ります。彼にもその習慣があります。やはり自分の父だったと実感します。

台風の日に骨壺が倒れて割れます。大家に粉にすれば撒いてもいいのではないかと言われ、粉々に砕きます。ある晴れた日に僧侶を先頭に、長屋の友人たちと河原に父の遺骨粉を撒きながら弔います。この時の音楽が少年がいつも奏でているメロディーです。

悲しいシーンなのに、空にイカのお化けが現れたり、ユーモラスな最後です。

俳優たちも、景色も、音楽も、後味も、とてもよい作品です。

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