この本は、大学に入学してすぐ、50代半ば、そして老女になった現在の3回読んでいます。どの時も感動した、ヘッセの作品の中で一番好きな長編小説です。
少年ゴルトムントは父の意向でマリアブロンの修道院に入れられます。ダニエル院長は年配者で、尊敬されていました。3,4年しか年の違わない見習い僧のナルチスは彼の弟子でした。ゴルトムントは彼を好きになり、好かれたいと思います。二人は友人になります。そしてしばしば対話をします。二人は深く違っていましたが、お互いから多くのことを学びました。
ゴルトムントは幼いときに母が失踪して頑なな父に育てられました。ナルチスは彼が母親に似ているのではないかと見抜きます。実際、彼の外見は母に似て愛くるしく人好きがしました。
18歳になった時、ゴルトムントは修道院を去る決心をします。別れの挨拶をナルチスにだけします。それからの放浪の日々は百姓家の納屋で眠ったり、森の中で食べ物を探してさまよったり、様々な女性に助けられたり、苦難の連続でした。でも女性にモテ、自由であることに満足していました。生きていることを満喫します。
ある年は騎士の家に逗留します。そこには美しい娘が二人いました。二人ともゴルトムントに夢中になります。でも姉の方を愛します。彼女は家を離れられません。ゴルトムントは再び放浪の旅に出ます。
一人の流浪者が付いてきて一緒に旅をすることになりました。ユーモアのある男でした。しかし寝ているときに彼の大事な金貨を縫い付けてある服を探られて、殺してしまいます。春がきて修道院で泊めてもらった時、そこで殺人の懺悔をし、そして礼拝堂のマリア像に引き付けられます。その像を作った親方を紹介してもらいます。
ニコラウス親方のところで木彫りの修行をし、聖人たちの像を刻みます。一番彫りたかったナルチスの顔をヨハネ像にしました。そして母の面影をマリア像に堀りました。けれど弟子になったりそこに留まったりはいやで、再び放浪の旅にでます。
死に絶えたペストの村をいくつも見、森の中で暮らし、女性を愛し、、、その女性を助けるためにまた殺人を犯します。
伯爵家に忍び込み、伯爵夫人のベッドにいる時、伯爵が帰宅しました。泥棒のふりをして逃げますが、捕まります。あわや死刑になりそうな時、助けに来てくれたのが僧ナルチスでした。二人は再会しました。
マリアブロンの修道院で聖人の像を彫る部屋を与えられ、弟子もできて穏やかに過ごせていたのに、再び彼は放浪の旅に出ます。けれどもう年を取っていました。ボロボロになって帰ってきます。そしてナルチスに看取られてなくなります。
最後はいつも涙がこぼれて止まりません。生きること、愛することを実感させてくれる物語です。
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