夫婦・親子も相性?『雲を紡ぐ』(伊吹有喜)

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雲を紡ぐ

美緒は高校2年生です。1年の時に受けたいじめのため、学校へ行っていません。自分の部屋のベッドで赤い温かいショールにくるまっています。母はそんな娘を心配するあまり、説明を求めたりお説教をしたりします。美緒は自分の気持ちをうまく言葉で言えません。

母は英語の教師をしている学校のインターネットの掲示板で中傷されていて、会社が上手くいかない父との間もぎくしゃくしています。しばしば口の立つ母方の祖母がやってきます。

美緒は家にいたたまれなくなって、父の故郷である岩手県盛岡市の山崎工藝へ行きます。彼女が生まれた時に祖父母が織って贈ってくれた赤いショールを持って。そこでホームスパンを羊毛から織り上げる祖父の山崎紘治郎と会います。

美緒は祖父に教わって羊の毛を洗い、干し、糸に撚り、紡いでいく工程を習います。伯母の裕子とその息子の大学生・太一も助けてくれます。岩手は山も川も美しくて気に入ります。

東京育ちで何でも言葉で表す母と岩手育ちで口の重い父とは意思の疎通がうまくいかず、家庭内別居しています。父は美緒を心配して岩手にやってきて、娘が自分が逃げた工房で楽しそうに働いているのを見ます。美緒はずっとここにいようと決心します。

祖父と美緒がこれからのことを報告しに東京の両親の家を訪れて、ずっと岩手で暮らして工房で修行すると告げた日、祖父はホテルで倒れました。祖父の葬式の後、息子は物置で冷蔵庫や洗濯機などの電気製品が、すべて彼の会社の製品であることを見つけます。父は故郷を去った息子を応援してくれていたのだと悟ります。

美緒は通信制の高校に入り直して、山崎工藝社で修行しようと歩きだします。

私は盛岡に行ったことがありますが、岩手山が堂々としていて、川の水は美しく、食べ物も美味しくてよい所でした。ただ人の口は重くて、東京人との会話はかみ合わないかもしれません。言葉がすぐに出ない美緒の性にあったのがよく理解できました。

著:伊吹 有喜
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