次々人手に渡っていく壺の行くへは?『青い壺』(有吉佐和子)

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青い壺

一話:厳しい父の元で修行を積んだ陶芸家の省造は、父亡き後も茶わんや壺を作って注文に応じています。父は厳しく、気に入らないものは、すぐに割ってしまいました。今回の窯出しでは注文の品のほかに、青い壺がなかなか良い色に出来あがりました。妻も褒めて、床の間に飾りました。そこへ道具屋の安原がやってきて「個展をしなさい」とほめちぎります。散歩に行って帰宅すると、壺がありません。「デパートの安原さんが持って行きましたよ。東京本店の美術コーナーで扱いますって」。もう少し手元に置いておきたかったのに。晩年の父が依怙地になっていったのが、わかる気がしました。

二話:定年退職をした夫が毎日家にいることに辟易している妻。お世話になった常務さんにお礼を言いに行こうと、夫を誘います。日本橋の本店で、青磁の経管という壺を見つけます。2万円ならば丁度いいです。夫はデパートの包装紙でくるんだ桐箱を持って、半年前まで通った会社へ行きます。今は副社長になった元上司にお礼の包を渡すと、元居た部屋の席に座ります。そして伝票の束に印を押し始めます。お昼になると社員食堂へ行って、気を利かした部下の食券で昼食を食べ、屋上に上ると体操を始めました。「50年も務めるとああなるのかな」と中年過ぎは憂鬱になります。

三話:芳江と孫がお花を活けているところを訪ねた京子。実はお見合いの話を断りにきました。彼女が帰ったとたんに甥がきて、「面倒がはぶけたようなもの」とあっさりしています。「お互いに飽き飽きするほど長く暮らしている女性がいますが、結婚にはふみきれないのです」。あっけにとられました。孫は青磁の壺に可愛く花を活けて、寝てしまいました。

四話:芳江は青い壺には白い花が似合うと気付きます。そこへ娘が来て、嫁いだ家の相続争いの話をします。帰って行ったとたんに、珍しく夫が早く帰宅しました。そして妻が泣きながら、娘が生前贈与をしてほしがっていると言います。夫は憤然として「思いっきり長生きして、迷惑をかけてやる」と言います。そして青い壺を見つけ「あれは家に置いておきたくない。すぐ片付けろ」と言います。芳江は紙にくるんでボール箱に入れました。

五話:千代子は兄夫婦の家で邪険にされている母を見るに忍びず自分のマンションに連れてきました。彼女が勤めに出ている間は、母は居間でラジオを聞いています。千代子は一日休みを取って、母を大きな病院へ連れていき、診察してもらいます。「左は緑内障ですが、右は白内障なので手術しましょう」と言われ、驚きます。一日会社を休んで付き添いました。3週間の入院で、母は片眼が見えるようになって、帰ってきました。そしてテレビの横にある青磁の壺に気づいて褒めます。「ウチにはもったいないから、先生にお礼に上げましょう」と千代子は言います。

六話:医師の石田はバーで患者からもらった長方形の箱を預けて、若い客たちと軍歌を歌ったりして、そのまま帰ってしまいました。

七話:バーのマダムが届けてくれた青い壺からの連想で、母親が父との思い出話を語ります。

八話:いつも帰りの遅い夫が誘ってくれて、土曜日の夜、特別おしゃれをして、ホロホロ鳥を食べにいきます。ところが帰宅すると、泥棒に入られていました。盗まれたのは青磁の壺だけでした。

その後、青磁の壺は京都、東京、スペイン、東京の病院、と旅をして、ついに蔵元の省三が目にすることとなります。ところが古美術の鑑定で有名な男は、「これは唐物だ。君の作品ではない」と言い切ります。

*青い壺と共に、関わる人々の話が面白い短編集です。さすが、有吉佐和子女史の作品です。

著:有吉佐和子
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