百合子が5歳の時から33年間、温かく見守ってくれた継母の「乙美母さん」。71歳でこの世を去り、その49日の準備をしています。百合子は素直に甘えられず、そっけなくしていましたが、ほんとうは大好きでした。
乙美は料理が上手でしたが、父も褒めたことがありません。そこへ井本という名の黄色い髪の少女がやってきます。乙美が教えていた絵手紙教室の生徒で19歳だそうです。「先生はレシピを書いていました」と言って、単語カードを大きくしたような冊子を見つけ出しました。そこには「四十九日のレシピ」もありました。「私はお金も預かっています」と言って、彼女は部屋の掃除から始めました。
百合子はもともと細い娘でしたが、先日の葬儀の日にはきゃしゃではかなげな印象でした。実は夫の浩之が教え子の若い女性と浮気しているのです。離婚すると言うと、「どちらも愛している。でも彼女に子どもができたようだから責任を取らないと」という返事です。百合子は夫の母親とも同居して、頼られていました。熱を出して、実家の2階で寝込みました。
次の日の朝、父は井本と朝市に行って、食材を揃えてききました。井本は家庭に恵まれていなくて、乙美から生活の基礎を習ったと言います。彼女は、ハルミと呼ばれているブラジル人の若い男をつれてきて、家の中の不具合を直してくれました。そして部屋の壁に模造紙を張り巡らせ、乙美の人生の年表を書き込むことにしました。余白のところには絵手紙を貼ることにして、百合子は井本のお供で東京へ戻ります。
ヘルパーに見守られて姑が寝ていましたが、百合子に謝ってルビーの帯留めをくれました。公園で浩之と会っていると、不倫相手の亜由美が子どもを連れてきて、百合子に別れてほしいと言います。20代でわがままそうな女性です。一緒にいる男の子がいじけているようでした。浩之が彼女のマンションに連れて行かれたので、井本と男の子も一緒にタクシーで浩之の家に行きます。アメリカンドッグが食べたいと言うので、ソーセージにホットケーキミックスを付けて揚げました。そこへ浩之と女が駆け込んできます。「子どもを連れて行くなんて、誘拐罪だよ」とわめきます。言い合いをしていると、「出ていけ!」という怒鳴り声がしました。寝ていた姑が起き出して「気に入らないことがあると死ぬ死ぬって脅かして、死ぬってどういうことか分かっているの!」と凄い形相です。亜由美は子どもを引っ張って出ていき、姑は泣きました。
実家に戻り、さまざまな雑用に追われている頃、乙美母さんの上司だった女性が来て「リボンハウスの人達は、そこに居たことを隠したい人もいて、集まってくれないかもしれません。ごめんなさい」と言いました。リボンハウスは心に傷を負った人たちをサポートする場所です。そして1枚の写真を見せてくれました。鬼に扮した乙美母さんが笑って逃げています。父との結婚が決まった34歳ぐらいの時で、明るい笑顔でした。
いよいよ当日、親族がぞくぞくとやってきます。父の姉が「お坊さんもよばないで、変な会だねー」と言います。けれどご馳走はたくさんです。リボンハウスの人たちも次々に来て、模造紙に書き込んだり、張り付けたりしてくれます。玄関に浩之の姿が見えたので、父は河原へ誘い出し、本音を聞きました。彼はまだ百合子を愛し元に戻りたいと願っていました。家の中は音楽があふれ、踊りを踊っている親族もいて、大賑わいでした。それは乙美が願った明るい四十九日の風景でした。
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