T大としているけれど、これは本郷の東京大学・大学院理学系研究科生物科学専攻の面々に、作者が綿密に取材した結果の話でしょう。
登場するのはいつも黒い服を着た殺し屋のように見える松田教授(男)、助教の川井(男)、ポスドクの岩間(女)、院生の本村(女)と同じく加藤(男)。そこに赤門から少し入った路地にある円服亭の見習い・藤丸がからみます。
松田教授は「緑の手」といわれるほど研究熱心で良い仕事をしており、学生たちにも丁寧な指導をしています。
本村はシロイヌナズナの研究をしており、横浜の大学を出てから試験に合格して、アパートに暮らしながら研究にいそしんでいます。
シロイヌナズナを育て、顕微鏡を覗き、葉っぱに液を吹きかけて溶かして、ひたすら細胞の数を数えています。
藤丸は円服亭の大将から料理の技術を盗みながら、デリバリーに行くと本村の研究を覗かせてもらう内に、本村を好きになり、告白します。しかしはっきり断られます。自分は植物に夢中で男性と付き合ったり結婚したりしないと。
それでも藤丸は、彼らの打ち上げや合同セミナーのお料理に全力をふるいます。
「愛のない植物」と愛に満ちた人間たちとの対比がはっきりした心温まる物語です。
ポチップ
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