アメリカの高校生の語る『ライ麦畑でつかまえて』(サリンジャー 野崎孝訳)

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ライ麦畑でつかまえて

高校生のホールデン・コーンフィールドは、成績不良で学校を退学になります。その挨拶に受け持ちの先生のところへ行き、夜は同室者と喧嘩します。学校を出てから汽車に乗り、街で遊び、家に着くまでの話が事細かく記されています。この少年の観察は細かく、相手に抱く感想もデリケートです。

ホテルに泊まった時、いい加減なボーイが女の子を紹介します。けれど彼は何もせず、お金だけを払います。翌朝、荷物を駅に預けて小さなスナックで朝食を取ります。その時、隣に座った尼さんの持っている献金籠に10ドル入れます。

汽車に乗ると、空いているのに彼の隣に40代の女性が座ります。彼女の息子もペンシーの学生でした。彼は偽名を使って、話を合わせました。彼女は降りるとき、遊びに来てくれるように言いましたが、あんな野郎の家には行くまいと思います。

ペンシルベニアで降りてタクシーに乗り、エドモンドホテルに行きます。そこからいかがわしい女に電話しますが、断られます。妹と電話で話したかったですが、親に知られるとまずいので諦め、ホテルのラウ”ェンダールームに行きます。そこで3人連れの女性と踊ります。詰まらない女達でした。

ガールフレンドのジェーンのことを思い出します。家が隣同士のイカした女の子です。電話で誘って、ミュージカルを見に行く約束をします。幕間に彼女の知り合いの男と出会って、親し気にしゃべっているので、腹が立ちます。芝居が終わってすぐに送ろうと思っていると、スケートをしに行こうと誘われます。けれど二人とも下手で、すぐに止めてバーへ行きます。そして学校が嫌でたまらないと、告白します。勉強を辞めて、山奥の小川のほとりで暮らそうと誘いますが、「そんなことは大人になってからできる」と断られます。くだらない冗談を言ったら、すごく怒って一人で帰ってしましました。

仕方なく、カール・ルースという3才年上のフートンスクールを卒業した頭のいい奴を電話で誘い出します。彼をセトン・ホテルの中のウィカー・バーで待ちます。彼が現れるとくだらない冗談ばかり言い合います。彼は「うちの親父の精神分析を受けるといい」と言って、帰りました。

すっかり酔っぱらった僕は、夜の街に出て公園を通ります。凄く寒くて肺炎になりそうです。自分が死んでも墓には入りたくないと思います。そして可愛い妹に会いたくてたまらなくなります。やっと自分の家に辿り着きました。暗闇の中をそーっと歩いて、上の兄の留守の時は兄の部屋で寝ている妹をスタンドの電気をつけて見つめます。そして「起きてくれ、フィービー」と声をかけると、パッと目をさまし「ホールデン」と言って、抱き着いてきました。けれど「どうして水曜日に帰らないの?学校を辞めさせられたの?パパに殺されるわよ」と言います。「兄さんは何でも嫌なんじゃないの?好きな物はなに?」と聞かれたので「ライ麦畑でつかまえて、っていう歌があるだろう?子供たちがライ麦畑を通って行くとき、落ちないように捕まえたいよ」と答えます。

今までで一番いい先生のアントリーに先生に電話をし、ペンシーを辞めたことを話します。そしてフィービーの部屋でダンスをしていると、両親が帰ってきます。慌てて押し入れに隠れます。母はフィービーにお休みを言いに来ると去ります。フィービーが8ドル85セント貸してくれました。泣けました。そっと家を出て、アントリー先生のところへ行きます。

アントリー先生は、ハイボールを飲みながら「学校教育は自分の頭のサイズはいくつかということが分かりかけてくることだ。自分の頭に合うサイズの帽子を選ぶことができるようになる」と言います。ベッドの用意をしてもらい、休みます。ところが先生が僕の頭をなでているので、びっくりして飛び起きます。そして駅に預けてある荷物を取りに行くと言って、飛び出します。

地下鉄の中央停車場の待合室で寝ます。侘しかったです。街はクリスマスっぽくなっていました。通りを歩いていると自分が下へ沈んでいくような気がします。フィービーの小学校へ行って、「12時15分に美術博物館の入り口に来てくれないかしら?お金を返します」と書いた便せんをフィービーに渡してもらうように頼みます。ところが現れたフィービーは大きな旅行鞄を持ち、自分が上げた帽子をかぶっています。「私も学校へは戻らないから、兄さんと連れていって」と言います。僕は慌てます。そして動物園に行きます。それから回転木馬に乗せます。雨が降ってきたのも構わず、回転木馬でぐるぐる回っている妹を見続けます。とても美しい眺めでした。

その後の僕がどうなったかは話しません。ただ、話に出てきた連中が身辺に居ないのが物足りないです。

*永遠の青春小説と言われる名作。今の日本の若者はどういう感想を持つでしょうか?

著:J.D.サリンジャー, 翻訳:野崎 孝
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