若者たちを支えて育てる『三十光年の星たち』(宮本輝)

三十光年の星たち

京都の路地の小さな貸家の並ぶその一軒に住む坪木仁志は30歳。子供の時から父に疎まれていました。まじめな兄は医師になり、弟は公務員になります。仁志は私立大学では勉強せずに落語ばかり聞いていて、卒業してからも一つの仕事が長続きせず、120万円の借金がありました。父に借りに行くと出してくれましたが、これは親子の縁切り金だと言われました。

一緒に暮らしていた皮製品作りの女性にも逃げられて、今は一人で6畳一間に暮らしています。路地の突き当りの一軒に暮らす七十代の佐伯平蔵という金貸しから80万円借りています。無担保・保証人なし・利子自由でお金を貸す人でした。

ある日、この老人から旅に出るから仁志の車で供をするように命令されました。膝の悪い彼の運転手をしたら借金から日当で減らしていくという約束です。突然の話に腹を立てながらも、彼は運転手を務めます。買い物用として5万円預かります。

最初は福知山へ。北里千満子という、夫が残した借金を32年間、毎月5千円、8千円と返し続けてくれた女性を訪ねます。そして借用書を返します。京都の有名な料亭の工房に勤めていて、その日は裏山の植林の日でした。仁志は植え方を教わって60本の苗を植えました。一緒に植えた千満子の息子・虎雄と電話番号を教え合います。虎雄は「100年先のこの森は見られへんなぁ」とつぶやきます。

どろんこになった仁志に、佐伯は背広とワイシャツを買えるお金を渡します。仁志は薬局でもぐさを買ってきて、ホテルの部屋で佐伯にお灸をして、喜ばれました。

父親に見放された仁志は、他人の佐伯からは「心のきれいな奴」と見込まれて、借金の取り立てを任されたり、最後は閉じた料理屋を引き継ぎ、名物のシチューを出すことを提案されます。毎日シチューを煮込んで研究に励みます。

清水寺の近くの美術骨董屋に勤める虎雄が仁志の部屋に同居するようになり、虎雄は植物染色の工房で修行するようになる紗由里に引かれます。彼らの修行の結果は30年後に出ます。

佐伯は厳しく、時には暖かく若者たちを導いていきます。仁志も細かい気配りのできる良いヤツです。若者たちの会話には笑ってしまいますが、それぞれが自分の好きなこと、やりたいことに向かって頑張っていく姿が、清々しいです。そして認め、支えてくれる大人の存在が大事と、しみじみ思える物語です。

この物語には、宮本氏の思いが深くこもっていると受け取れました。

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