働く30代女性の大家さんとのご近所付き合い『待ち遠しい』(柴崎友香)

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待ち遠しい

*この著者は、住んでいる家のことや周りの雰囲気を描くのが上手ですね。その上この本は、大家さんとその親族との付き合いやそれぞれの人となりがよく描かれています。

北川春子は29歳で実家を出てから、一人暮らしをして10年目です。やっと気に入った家を見つけました。母屋の庭を見晴らせる小さな二階建ての離れです。母屋には先代が亡くなった後、話好きの長女・ゆかりさんが住んでいます。その裏手には、若い甥と可愛らしい妻の遠藤沙希が住んでいます。

ゆかりさんは「一人で食べるより大勢で食べたほうが美味しい」と言って、春子や沙希を呼んで夕食を囲みます。ときどき近所のギターを弾く男性を呼んだり、春子の友人の直美とその5歳の息子が加わることもあります。

ある秋の日、洋服の片づけをしていたら、右の脇腹に激痛が起こりました。なんとかスマホを手にして救急車を呼びます。両親は旅行中なので、友人の直美に着替えを持ってきてもらいました。普段は一人暮らしを辛いとも寂しいとも思いませんが、保証人や同意書という制度に不安を感じます。

お 正月は実家に帰って、母の作った毎年通りのお節料理をご馳走になりますが、父母のいたわりとも取れるれる「あんまりガツガツ働かないでもいい」という言葉に違和感を感じます。仕事も会社の人達とも上手くいっていて、不満はありません。実家からは3日の夜に帰りました。

連休に京都の日本海側へ旅に出ました。ゆかりさんと沙希と一緒です。天の橋立で記念写真を撮りますが、紗希は一人で橋立の松並木を歩いたり、宿の部屋も一人の小部屋を使ったりします。おばさんたちと一緒は嫌なのかなと気を使ってしまいます。蟹だけは美味しくて思う存分食べました。

沙希の夫の遠藤拓矢が警察で事情を聴かれました。先輩がリフォーム詐欺で逮捕されたそうです。そこに沙希の母とゆかりさんの妹である拓哉の母がからみ、ややこしいことになっていきます。

ゆかりさんはお料理が上手で親切な人ですが、お節介なところが困ります。春子とギターを弾く男性とを近づけようとしているフシがあるので、春子はキッパリと断ります。後で、言い過ぎたかなーと反省しましたが。

一人で生きていく覚悟をしている春子が、周りの人と賑やかに暮らしたいゆかりとどのように折り合いをつけていくか丁寧に綴られている物語です。女性ならば誰でも思い当たる場面があるでしょう。

毎日新聞出版
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