*20歳になったばかりの青年パウルが見たこと経験したことを語っているので、まっすぐに事実として伝わってきます。
彼には戦友がいます。前線に出ていない時は、カルタをしたり冗談を言い合ったりしています。関心の最たるものは食事です。白いバンと肉の入った豆のスープは皆の好物ですが、だんだんと粗末なものになっていきます。ある時、人のいなくなった村でアヒルを見つけて焼いて食べました。それは大ご馳走で、仲間に持ち帰りました。
戦闘の場面は辛いです。仲間がどんどん敵の弾に当たっていきます。その姿も克明に記されています。戦争とは若者が死んでいく場所です。そして軍馬も遣られます。仲間の一人が「馬にどんな罪があるんだ」と怒ります。
戦争中だというのに・・・?という場面が一か所あります。掘割の向こうで女性が3人、手を振っています。こちら側の3人が夜、行くことにします。軍用パンと腸詰缶と巻煙草を新聞紙にくるんで、泳いで渡りました。3人は女性の家でよい気持ちになります。そして、誰にも見つからずに帰りました。
野戦病院の悲惨さ、ロシア兵の俘虜の哀れさ、中には音楽をする者がいてバイオリンを弾いてくれましたが、却って悲しくなりました。パウルには敵のことも、国にいる時は百姓だったのだろうとか家族がいたのだろうとか、相手のことをおもんばかる優しい面があります。
ある時、上着と靴の新しいのが配給されました。何故か?といぶかしく思っていると、カイゼルが来ました。全員直列不動で迎えましたが、カイゼルは思ったほど大男ではなく、兵隊たちにも声をかけました。俺たちは「カイゼルが戦争を始めたのか?」「きっと有名になりたかったのだろう」「戦争すると得をする人がいるんだろう」などと、話し合いました。
8人のグループで、誰もいなくなった村村を守備することになりました。こんなチャンスはないので、飲み食いと寝る場所の贅沢を考えました。若い子豚を食べ、ジャガイモのパンケーキを焼き、ピアノを弾いて歌いました。ところが、敵に嗅ぎつかれ、弾丸が降ってきました。慌てて持てるものを持って、自動車で逃げました。その後フランス軍に撃たれて、パウルとクロップは2人並んで野戦病院に収容され、それからカトリックの病院に移ります。そこでは次々にけが人が運び込まれ、亡くなって行きます。クロップは足を切られました。
パウルは療養休暇を貰った後、3度目の戦地行きを命じられました。そして1918年10月に戦死しました。その日は全戦線に渡って穏やかで、「西部戦線異状なし」と報告されているくらいの日でした。
*語り手のパウルが明るい調子なので、辛い思いをしながらも読み上げました。戦争は国のトップの人の思惑で始め、その国の若者を大勢死なせてしまい、相手の国を荒廃に至らしめる、とんでもなく愚かなことだと思います。現在のロシアとウクライナの戦争も、「一日も早く止めて」と願っています。
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