読感– category –
-
読感
小学5年生の、出発点だった夏休み『しずかな日々』(椰月美智子)
枝田光輝は、働く母と2人暮らしの小学5年生です。家事はまあまあ手伝えますが、勉強はダメ、運動もダメで、友達もいません。ところが5年生になったクラスで押野に初めて声をかけられて、友達になりました。押野は明るくてお調子者の人気者で、光輝とは真... -
読感
博士の人生と植物愛が判る『草木とともに 牧野富太郎自伝』(牧野富太郎)
*4月からNHKの朝のドラマで牧野富太郎博士の物語が始まります。主演を神木龍之介が演じるので、とても楽しみです。大袈裟に言うと、私は牧野先生の孫弟子ではないかと思います。50代の10年間、月一回の植物観察歩きで指導してくださった先生が、牧野博士... -
読感
風変わりな司書が選んでくれる本『お探し物は図書室まで』(青山美智子)
一章「朋香」:21歳の朋香の職場は、総合スーパーの中の婦人服売り場です。田舎を脱出したくて東京の短大に入り、就職の時に30社くらい落ちて、最後に決まったのがこの会社です。けれど、お客のクレームには上手に対応できず、なんとなく勤めているだけで... -
読感
今の看護師が80年前の戦時下に行ったら・・・『晴れたらいいね』(藤岡陽子)
紗穂は24歳の看護師です。受け持ちである雪野サエの様子を診にきました。95歳、脳梗塞を起こしてもう3年も意識不明です。ところがその夜、サエの意識が戻り紗穂の腕を握ります。そのとたんに大地震が起こりました。病室が逆さになった気がして、強い吸引力... -
読感
60歳後半から70代半ばになった著者からのメッセージ『質問 老いることはいやですか?』(落合恵子)
*お正月過ぎに、青山通りから入ったところにあった「クレヨンハウス」の前を通ったら、「吉祥寺に引っ越しました」という看板が掛かっていて、がっかりしました。以前は道路から下がったところにオーガニックレストラン、2階から上は絵本の専門店があり... -
読感
ヨーロッパに着いた少年たち『風神雷神~下』(原田マハ)
少年たちが涙を流す出来事が、ゴアで起こりました。日本を出る時から父のような存在だったバリアーノがインドの管区長になられて、ゴアに留まることになりました。一緒にローマに行けないことを、心から残念に思って泣きました。宗達には「そなたも使節の... -
読感
朗らかな天才少年・俵屋宗達の物語『風神雷神~上』(原田マハ)
俵屋宗達は、京都の扇屋の息子です。幼いころから絵を描くのが好きで、父を手伝って扇の絵を描いていました。彼が描いた絵の扇はよく売れました。数えで12歳になった時、織田信長から安土城へお召がありました。殿の前で絵を描いてほしいというお達しでし... -
読感
文章が巧みな「ブラックボックス』(砂川文次)
*第166回芥川賞を受賞した、文芸春秋に載っている作品を読んでの感想です。出だしから彼のいる状況がスーッと入ってくる文章でした。 佐久間亮介はメッセンジャーバッグを背負って、雨の中、自転車を走らせています。ベンツに邪魔され、トラックに雨水... -
読感
似た経験をしている人には共感できる『自転しながら公転する』(山本文緒)
都(みやこ)は高校を出て、東京で好きなブランドのショップに勤めていました。けれど母の具合が悪いから、と父から連絡があって牛久大仏の見える茨城県の実家に戻ります。母は重い更年期障害で、起き上がれない日もあります。都が病院へ付き添うようにな... -
読感
愛らしく賢い『ある小さなスズメの記録』(クレア・キップス 梨木果歩訳)
1940年7月1日、一人暮らしの寡婦Kは、ロンドン郊外の自宅の玄関前で瀕死の小鳥を見つけました。温かいフランネルで包んで台所の炉辺に座り、くちばしが開くようになってから、マッチの軸で温かいミルクを小さな喉に一滴ずつ垂らし、小さな鉢の内外を毛糸で...