大阪弁で綴られる『渦』(大島真寿美)

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渦

ずっと以前にこの作家の『ピエタ』を読んだ時、ベネチアの雰囲気が色濃く出ていて、ベネチアに住んでいる方かと思ったほどでした。

『渦』は2019年に直木賞を受賞しています。

主人公の穗積ほづみ成章は、12,3歳までは学問に秀でた賢い子でした。父の学者・以貫いかんに連れられて人形浄瑠璃にんぎょうじょうるりに通う内にすっかりその虜になってしまいます。この世のようでこの世ではない。その世界にまってしまいました。

以貫は彼に近松門左衛門ちかまつもんざえもんの硯をもたせて京へ修行に出します。穗積半二と名前を改め、預かってくれた有隣軒の孫扱いでひたすら本を読んだり芝居を見たりして過ごします。

有隣軒の急死の後、実家に戻るも兄が嫁取り、またも義太夫節の染太爺の元に転がり込みます。

道頓堀は極楽でした。芝居小屋で大道具を手伝ったり、人形の手入れに手を貸したり、丸本を見せてもらったり、三味線を触らせてもらったり・・・。

そうこうしているうちに竹本座に出入りするようになります。義経千本桜よしつねせんぼんざくら仮名手本忠臣蔵かなでほんちゅうしんぐらのような傑作が次々と生まれて行きます。

見よう見まねで半二が台本を書き出しましたが、さんざんダメ出しをされました。弟分の正三が歌舞伎の台本を書くことに刺激され、その上竹本座に移籍したことに噴飯ふんぱんもので、“役行者大峰桜えんのぎょうじゃおおみねざくら”を書き始めました。

私の好きな「あをによし」。京都の酒屋に厄介になって、妹山いもやま背山せやま、その間を通る吉野川をながめます。そこから“役行者大峯桜”を書いて世に出ます。

京の煮売り屋の姪・佐久を嫁にして、長屋で暮らしますが、娘を1人もうけ、好きなだけ書いていった半二。このふんわり大らかで性根の座った佐久が好感を持てます。酒屋の娘・三輪を据えた“妹背山婦女庭訓いもせやまおんなていきん”は、お客を呼びました。

好きな事にとことん精出して,最後は娘が後を継いでくれて、幸せな男でしたね。

人形浄瑠璃を見たくなりました。

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