母の愛の力はすごい『タカラモノ』(和田裕美)

タカラモノ

ほのみが小学校2年生の秋、家族は池を埋め立てた新興住宅地に引っ越してきました。その一か月後、小学校の運動会があり、6年生の姉はリレーで一番に、ほのみは周回遅れでビリでした。でもママは「あそこであきらめないで最後まで走って偉かった」とほめてくれました。ただ、目立つ服装のママの派手な応援は恥ずかしかったです。

ママは昼間は喫茶店、夜はスナックになるお店を始めて、知らないおじさんたちのママにもなりました。ママはさりげないお料理が上手でした。特に家で作ってくれるオムレツは絶品!でも友達のお母さんから「ほのみちゃんのお母さんはいつも家にいないでしょ。かわいそうに」と言われ、ムッとしてお土産に持たされたおかずをゴミ箱に捨てます。

ある日、家の鍵を忘れてトイレの窓から入ろうとし、枠に挟まったまま動けないでいたらママが帰ってきて助けてくれました。「いつもママがいないから他のお母さんから、かわいそうなんて言われる。私はぐれて不良になる」とわめきました。するとママは「あんたが自分で不良になりたいならそれでもええ。でも誰が損をするの?自分が選んだことは自分で責任をとっていくんやで。幸せになりたいんなら誰かのせいにしたらあかん」と言って、ぎゅっと抱きしめてくれました。この母は生まれた時からこの娘をタカラモノと思っていました。

ほのみは「外側にあるものを全部はぎ取ったら、きっと人の真ん中にあるものに辿り着く。暗闇で光るろうそくのように、ポワンとあったかい光を出している人が、わたしはたぶん好きなのだ」と思います。

京都弁で会話がすすむこの物語は、いわゆる普通の母とは違う母親と健気な娘の話です。自分のやりたいように生きる母とその母が大好きな娘ですが、折々母が話す経験からくる言葉がじ~んと心に響きます。

ほなみが失恋した時、「世の中は結果ばかりや。誰かを好きになることが、人生でいちばんすばらしいことなんや」「男と女には打算がつきものや。・・・ほんものになるときは、損得がない」。ほなみが社会人になって上の女性から意地悪された時、「その人はどんどん意地悪な顔になってくるで、その人と同じ壺に入ったらあかん。壺から出るお経を唱えとき」

母は「うれしい、うれしい」と言葉を繰り返す癖があります。最初は自分のため、二つ目は相手のためだそうです。へこんでいるときも「幸せ、幸せっていうと、1パーセントはへるよ」と言います。

そんな母の最期に、涙ぼろぼろです。心が洗われる物語です。

著:和田裕美
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