そうね、そうね、と同感できる『できない相談』(森絵都)

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できない相談

*40編の中から5編、選びました。

「コンビニの母」:和也の勤め先のビルの一階に、コンビニがあります。目まぐるしくスタッフが入れ替わります。そんなある日、コンビニに入ると雰囲気が違います。前方のレジからドラえもんばりのドラ声が響いてきます。見ると、下ぶくれ丸顔の「福原」という名札の女性。買い物客の誰にでも大声をかけています。お握りを買った和也には「気が合うわぁ。私もね、お握りは鮭とおかかと決めているの。これぞ王道ね!」。希薄で清々しい人間関係を求めている都会人には合わないのではないかと和也は推量します。ところが、レジ待ちの前には、白髪の面々がずらりと並んでいます。「おじいちゃん、いつもありがとね。はい、30万円のお返しで~す。きゃきゃきゃっ。」。都会は単層的ではないと学びました。

「書かされる立場」:ヘルマン・ヘッセ「少年の日の思い出」の感想文。飯山直人「僕の立場で読みました。隣の家のエーミールが珍しい蝶を持っていると聞いて見に行くと、彼がいないので持ちかえりました。お母さんに白状したら、謝りに行きなさいと言われ、そうします。エーミールは、君はそういうやつなんだな、と言います。僕がかわいそうです」。名高翔「あらゆる点で模範少年というエーミールなら、僕が自分の収集を全部上げるというなら、もらえばいい。大したことないならお金で解決すればいい。知恵が足りなかったと思う」。松井さくら「蝶の立場になると、どっちもどっちです。生きている蝶をを捕まえて標本にするなんて、残酷です。二人はへんたいです」。 

「明らかに両手が塞がっているとき」:N子さん。37歳、二児の母、保険のセールスレディ。断る、ということができません。路上のビラ配りにも不親切にできません。両手に荷物を持ち、保育園のお迎えに急いでいる時、男がビラを配っていました。そこで、ビラ配りに向かって大きく口を開けました。これが巷で取り沙汰されている、恐怖の口開け女の真相です。

「日本語で話せます」:私は日本に8年滞在していますので、日本語はできます。それなのに、どなたも私に英語で話しかけてきます。外国人を見ると英語で話したい日本人が多いので困ります。

「こっちの身」:店構えも良く、寿司の味も良く、値段も妥当な店なのに、あまり人が入っていません。その理由は…大将がうるさいのです。「これには塩で」「これにはしょうゆを、1,2滴かけるだけ」。そこで男は大将をお好み焼きに誘います。そして「ここはソースだけで」とマヨネーズを遠ざけました。

*いずれも「うん、うん」「ふふふっ」と読める短編集です。

著:森絵都
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